文字で自然に笑えない僕らは(愛想笑いの再発明)

自分が笑っていることを相手に伝えるために、どんな記号を使うだろうか。「笑」とか「(笑)」とか、「w」(あるいは笑い具合に応じて「www」)とか、YouTubeで見る外国人のコメントでは「lol」とか「jajajaja」みたいな記号が使われる。
僕は個人的な好みから、こうしてブログを書いたりツイートしたりする際にはそうした記号を使わないが、人にテキストメッセージを送る際にはよく語尾に「笑」をつけたりして使う。(正確には文が終わった後の句点(。)の後に「笑」をつける)。それをつけないと、相手に「怒ってる?」と思われたり敵意があると思われるような気がするからだ。
そんな風に誰かにテキストでメッセージを送る時に、画面の前で真顔で語尾に「笑」をつけながら(「笑」とか「w」とか打ちながら本当に笑ってる人はそんなにいないと思う)、なんとなく違和感というか、収まりの悪さを感じることはないだろうか。
日本では言文一致で書き言葉と話し言葉がだいたい同じように表されるようになって久しいが、いまだに人は文字でうまく「笑う」ことができないように思う。

一対一の文字によるコミュニケーションが生まれて数十世紀、人間は未だに人間の笑いというコミュニケーション手法をトレースすることができるに至っていない。

笑いは出来るだけ齟齬のないコミュニケーションを行うために使われる。その中でも愛想笑いは重要だ。便宜上、別に面白いことがない時に人が見せる笑顔を愛想笑いとする。笑いは面白いと思ったときにそれを伝えるためだけの手段ではない。別に面白いことがなくても、例えば相手に敵意がないことを伝えるために人は笑うことができる。

また愛想笑いは「特に用がない」ことを最大限敵意なく相手に伝えるための手段ではないだろうか。パーティーで知り合いが自分に話しかけてくる。彼あるいは彼女が愛想笑いをしているか真顔であるかによって受ける印象は大きく異なる。真顔な時は何か用事があるとき(たとえばトイレの場所を知りたいとか、相談したい切迫した悩みがあるとか)で、愛想笑いの時は特に用がないことが多いので適当にあてどない会話をしてもいい。そして適当なところで会話を切り上げたい時にも、最大限角が立たずにそれを伝える方法として人は愛想笑いをする。

テキストでのコミュニケーションにおいては、未だに人類は「会話を切り上げるための愛想笑い」と同等のものをさえ、持ち合わせていない。

文字に比べて人間同士の生の会話では、声の調子や表情を駆使して圧倒的に短時間で繊細なニュアンスを伝えることができる。手紙がメールになり、掲示板になり、ブログのコメント欄になり、ツイートになり、チャットになり、文字によるコミュニケーションの粒度が小さくなっていけばいくほど、「笑わない」ことのリスクは大きくなるように思う。できるだけそれに近いものを求めて、人はチャットの最後に「笑」みたいな記号を使ったり、絵文字を使ったり、LINEのスタンプを使ったり、「いいね」を使ったりする。そうして愛想笑いを再発明し続けながら人のコミュニケーションは洗練されていくのか、退化していくのか。

なんか変に話が大きくなったうえにまとまりないけどテキストで会話切り上げるのむずくね?って話でした。笑


2016年5月9日

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