わたせせいぞうのハートカクテルを全巻買った

わたせせいぞう『ハートカクテル』

親の世代の漫画だ。こういう絵柄は昔からどこかしらで見たことがあるが、今までわざわざ手にとって読もうとは思わなかった。絵柄も古臭いし、大した盛り上がりもないし、登場人物のファッションもトレンディを感じさせるし、キザなセリフもダサい。こんな漫画はたぶん今までの自分なら絶対読む気にならなかったが、いろんなところでパロディされるのを見るうちに気になって、なぜか急に全巻セットで買って今読んでいる。

わたせせいぞうの「この感じ」はあまりに確立しているので、「昔の漫画はこういうジャンルがあるのか」ぐらいに思っていたが、どうやらこういう画風、作風の漫画家は、後にも先にもわたせせいぞうただ一人だけのようだった。一人でジャンルを確立しているのだ。

1ページ目から1枚のイラストレーションとして成立している構図のデザイン、平面的なのにみずみずしさを感じる光の表現、すべて手書きのキザな、どこか茶目っ気を感じさせる台詞まわし、小説の短編集のような不思議な読後感。もちろん時代性が強くて古いは古いんだけど、その時代性が好きになる。1話4ページのオムニバス形式で、決まった主人公もおらず、連載時の季節に合わせて話が展開される。

こういう良さというものがある。新しい良さを知るのは楽しい。ネットで見られる面白いものはどうしても同時代性の強いものばかりなので、出版されたもののように違う時代の良いものに出会う機会は少ない。この数年で趣味や面白いと思うものも少しずつ変わってきたのかもしれない。


2016年12月18日

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